読書:孫子 第3章【戦略で優位に立つ】

こんばんは。 稲葉です。

孫子の第3章【戦況を見極める】が非常に面白かったです。 それにしても、孫子とは無関係ですが「言うは易く行うは難し」という言葉がありますよね? 本章を読んでいて、そのことを痛感しました。 戦略を思い付くだけでも充分凄いです。 しかしそれ以上に、実行して結果にしていることに真の価値があると感じています。

そのような気付き、学びが多い章でしたが、中でもこれは現代でも上手く活用できそうだなと感じたことをピックアップしました。

これに形すれば、敵必ずこれに従い、これに予うれば、敵必ずこれを取る。

あえてこちらサイドの弱点を露呈させたり、囮を使うなどの工夫をして、敵側が有利な状態だと錯覚させ、戦闘意欲を掻き立てることがキーポイントとなります。 ここで、そのことが錯覚だとばれないことが最も重要視されます。 結果、エサに喰らい付いてきた敵に対して予想だにしない攻撃を加えることで、対策、予防策を立てていなかった分だけ大打撃を与えることができるわけです。 それによって、敵側は臨機応変な対応をすることもできず、こちら側の想定通りの動きしかできなくなります。 主導権を握り、戦局を思うがままにコントロールすることは、現代社会でも非常に重要なポイントとなるのではないかと考えます。 そういった戦略を最大限発揮するためには、得意分野、苦手分野をしっかりと把握する目が必要になります。

善く兵を用うる者は、その鋭気を避けて、その惰帰を撃つ。

人には必ず、士気や行動には、調子の波、リズムがあります。 その動きや変化のことを古代中国では「機」といいます。 その「機」をしっかりと見極めて、取るべき行動を取るものが戦局を優位な方向へ進めることができるということですね。 ちなみに「機」には大枠3タイプあります。

事機

事態の変化のことをいいます。 事態が有利に展開しているのに、それを生かさない者を、智者とはいわない。

勢機

態勢の変化のことをいいます。 態勢が有利に展開しているのに、それに乗ずることができない者を、賢者とはいわない。

情機

情勢の変化のことをいいます。 情勢が有利に展開しているのに、グズグズ躊躇っている者を、勇者とはいわない。

智将は「機」を見極めることと同時に、自軍の波を高めていくことも求められます。 このことは、組織のリーダーとして、必須スキルとも言えるのではないかと思います。

戦いは、正を以って合し、奇を以って勝つ。

正攻法や定石に沿った戦い方。

奇襲作戦や定石から外れた戦い方。

「正」と「奇」は、相反する概念といえます。 戦闘開始時は正攻法で攻めていき、戦局に変化が無く、埒が明かないと判断をした場合、策略を使って切り崩していきます。 そうやって主導権を握って、目標、目的を達成していきます。

智将は務めて敵に食む。

言うまでもないことですが、意外と見落としがちなことがあります。 それは、戦争の勝敗を決定付けることが、物資や食料の補給能力であるということです。 ちなみに第二次世界大戦において、日本は補給をかなり軽視していたそうです。 どれほど優れた兵士や名将であっても、食料も武器もなければ、戦争で勝つことはありません。

囲師には必ず闕き、窮寇には迫ることなかれ。

これは僕にとってかなり意外な考え方だったのですが、読んでみて凄く納得しました。 どういった意味なのかといいますと、追い詰めた的には必ず逃げ道を用意しておいた方が良いということです。 下手に逃げ場を封じてしまうと、「窮鼠猫を噛む」とも言いますが、思いがけない反撃を受け、損害をこうむる恐れもあります。 それに細々と逃げていった敵の勢いというのは、自然と弱まっていくものです。 昨日、参加した上念 司さんの講演会でも似たようなエピソードを教えて貰いました。 織田信長足利義昭を京都から追放した時も、命を取ることはせずに、今で言う広島県に逃したそうです。 結果的に信長との圧倒的な力の差を埋めることができなかった足利義昭は自然に消えていったとのことです。 いつの世も真の名将は大事にしている価値観は変わらないようですね。

兵を知る者は、動いて迷わず、挙げて窮せず。

戦争が上手い人は戦局をよく把握しているので、行動を起こしてから迷うことがなく、開戦から苦境に立たされることが無いとのことです。 敵味方双方の戦力を正確に判断し、天の時と地の利を得て戦うことができる。 その判断が希望的観測を交えたものだとしたら分析したことにはならないが、このことを正確に分析できているのであれば、戦場において有意義なものになります。

天の時

天が与えてくれる好機のこと。

地の利

地形などの環境条件のこと。 現代の生活や仕事の場でいうと、立場や状況のことだと捉えると応用が効くように感じました。

第3章【戦略で優位に立つ】を読み終えて

本章は戦略で優位に立つという副題でしたが、優位に立つためには自分のことだけではなく、同じくらい相手のことを調査、分析、そして研究をする必要があると感じました。 戦略の場において希望的観測は全く意味をなさず、いかにフィルターをかけずに現実を直視できるかがキーになるかと思います。

次に読む第4章【逆転を狙う】も非常に楽しみです。